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東京高等裁判所 昭和59年(行コ)78号 判決

静岡市登呂六丁目一六番二五号

控訴人

大村保

右訴訟代理人弁護士

廣瀬清久

静岡市追手町一〇番八八号

被控訴人

静岡税務署長

鈴木武男

右指定代理人

高須要子

小林康行

萩野譲

辻中修

和田正

右当事者間の所得税更正処分取消請求控訴事件について当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人が控訴人に対して昭和五六年八月二〇日付けでなした控訴人の昭和五三年分所得税についての更正処分のうち、課税長期譲渡所得金額について、四六六四万八〇〇〇円を超える部分を取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

二  当事者双方の事実上の主張は原判決事実摘示と同一であるからここにこれを引用する。ただし、原判決四枚目裏四行目の「別表」の前に「原判決添付」を加える。

三  証拠の提出、援用、認否は本件記録中の原審及び当審における書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  当裁判所は更に審究した結果控訴人の本訴請求を棄却すべきものと判断する。その理由は次に付加訂正するほか原判決の理由一及び二(原判決七枚目表一〇行目以下の「二」、同一三枚目裏二行目以下の「二」のいずれをも含む。)と同一であるからここに右記載を引用する。

1  原判決七枚目裏三行目「同第一〇号証、」の次に「同第二〇ないし第二三号証、」を、同裏五行目、七行目、八枚目裏二行目及び同表四行目から五行目にかけての「証人」の前に「原審」を加え、七枚目裏九行目「原告本人尋問の結果により」とあるのを「当審証人若月一郎の証言により」と改め、同裏一〇行目から一一行目にかけて「証人大村とし子の証言及び原告本人尋問の結果によつて原本の存在及び」とあるのを「原審における控訴人本人尋問の結果によつて」と改め、八枚目表二行目から三行目にかけての「原本の存在及び」を削り、同表三行目「原告」の前に「原審における」を加え、同表四行目「原本の存在及び」を削り、同表五行目「各証言」の次に「当審証人若月一郎の証言、原審及び当審における」をそれぞれ加える。

2  原判決八枚目表一〇行目「多くな」の次に「り、昭和三三年ころからは神奈川県三浦市三崎町において現在の妻トミと同居し、とし子とは別居状態にな」を、同裏四行目「送金し」の次に「昭和五二年ころにはその学は合計約三五万円になつ」を加える。

3  原判決九枚目中、表四行目「石垣」を「プロツク塀」に、裏二行目「財産分与に関しては」を「離婚の条件としては」に改め、同四行目「要求はしなかつた」の次に「が、若月に対し控訴人との離婚の交渉を一任した。同年四月ころ、静岡県富士川町相生町所在の前記丸山彦之助方において、同人、控訴人、控訴人の姉若月芳恵、控訴人の前妻さだとの間の長女美樹の夫望月靖夫及び若月らで控訴人ととし子の離婚について協議した結果、大略控訴人はとし子に別紙物件目録記載(一)、(二)の不動産(当時同目録記載(二)の土地は同目録記載(一)の静岡県庵原群富士川町中之郷字新町下一二八〇番一の土地の一部であつた。)を譲渡して履行することで出席者の間で合意をみた。そこで、控訴人はとし子とは実施的に離婚したものとして、同年六月ころ、とし子は三崎加工原料を退社したものとし、とし子への同所からの給料及び生活費の送金を打ち切つた」を加え、同行目「昭和」から同六行目末尾までを削る。

4  原判決九枚目裏一一行目「若月は」の次に「控訴人及びとし子の委任により控訴人からとし子に譲渡される不動産について登記手続をすすめる準備をしていたが」を加え、一〇枚目表三行目「末梢」から同四行目「提案し、」までを「抹消するように求めた。」に改め、同七行目「原告は」から同八行目「提案をし、までを削り、同行目「同年六月頃には、」の次に「控訴人は、とし子に対して譲渡することに合意をみていた不動産のうち、別紙物件目録記載(二)の土地を」を、同九行目「対して」の次に「各自約百坪宛」を、同裏四行目「作成して」の次に「若月を介して」を、一一枚目表三行目末尾の次に「控訴人と若月との交渉の過程において、とし子に対する税金が話題になつたこともなかつた。」を加える。

5  原判決一一枚目表六行目「作成され」の次に「(当時、控訴人らは離婚に伴う慰謝料及び財産分与の区別について十分な知識がなかつたものの、控訴人はとし子に対し離婚の慰謝料及び離婚後のとし子の生計の維持に資するものとして別紙物件目録記載(一)、(二)の不動産を譲渡する意思を有していたが、若月は控訴人ととし子の離婚の協議書の案文作成を豊島司法書士に依頼した結果、控訴人はとし子に対し別紙物件目録(一)、(二)の不動産を財産分与として譲渡する旨の文案が作成され、控訴人及びとし子はこれを了承してこの文案による協議書が作成された。)」を、同七行目「なされた。」の次に「控訴人らはとし子に対する前記財産分与によつて控訴人に課税されるとは考えていなかつた。」を加える。

6  原判決一二枚目表一一行目「勧告した」の次に「が、その間控訴人はとし子に対する別紙物件目録記載(一)、(二)の不動産の譲渡が同人に対する贈与であると主張したことはなく、」を加え、同行目「。原告は、」を削る。

7  原判決一二枚目裏九行目「及び」から一三枚目表四行目「証拠」までを「右認定にそわない甲第一五、第一六号証甲第一八号証、甲第二四号証の記載部分及び原審及び当審における控訴人本人の供述部分は右認定の事実」に改め、同裏一行目「である。」を「であり、控訴人からとし子に対する別紙物件目録記載(二)の不動産の財産分与が贈与税の逋脱を図る目的をもつてなされたとも、また、控訴人からとし子に対する財産分与が過当であるともいうことはできず、控訴人はとし子に対して財産分与として別紙物件目録(一)、(二)記載の不動産を譲渡したことによつて、財産分与義務の消滅という経済的利益を享受している(昭和五〇年五月二七日最高裁判所第三小法廷判決、民集二九巻五号六四一頁参照)から、財産を分与した控訴人に課税することが実質所得者課税の原則に反しないことはいうまでもない。」に改め、同二行目冒頭「二」を「三」に改める。

二  よつて、当裁判所の右判断と同旨の原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 柳川俊一 裁判官 近藤浩武 裁判官 林醇)

別紙

物件目録

〈省略〉

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